今Twitterで話題 !? 牛乳石鹸のWEBムービーを父親として検証&感想を書いてみたよ
こんにちは、オオセラです :D
このムービー、なぜかいま炎上気味らしいですね。
はてなブログおすすめ記事に下記の記事がエントリーされていて、興味を引くタイトルだったので思わず観てしまいました。
調べてみると、元のは2017年6月15日に公開されたムービーなので、なぜ今さらTwitterで話題に?とも思いますが。
実際に観てみました。なるほどなるほど...。
作成しているのがあの電通さんということもあり、炎上上等で話題作りという意見も分からなくはないですね。
今回は、このWEBムービーをあらためて検証してみて、父親である自分がどう思ったかを書いてみたいと思います。その前に、よかったらぜひ一度上記のムービーをご覧ください :D
このムービーで描かれている父親像とは?
父と子の絆。
とある男のなんでもない1日の物語。昔気質で頑固な父親に育てられ、
反面教師にすることで今の幸せを手にした彼。「家族思いの優しいパパ」。
でも、このままでいいのだろうか。ふとそんな疑問を抱く。
それでも、お風呂に入り、リセットし、自分を肯定して、
また明日へ向かっていく。がんばるお父さんたちを応援するムービーです。
(Youtube 『牛乳石鹸 WEBムービー「与えるもの」篇 フルVer.』の説明文より)
このムービーを作成したのは、みなさまよくご存知の電通さん。
牛乳石鹸さんは、電通さんは、このWEBムービーで果たして何を伝えたかったのか。
父親像は?
他に確認できるソースがないか、電通および牛乳石鹸共進社株式会社様のホームページで確認してみました。
こちらと、
こちら。
ポスターの文字が小さいので書き起こしてみました。
親父が与えてくれたもの、
俺は与えられているのかなぁ…
職を転々として、
裕福とはほど遠くて、
家庭には無関心で、無口で、無愛想で。
そんな親父みたいになりたくなくて、
必死で努力した。
大人になり、結婚し、子供が生まれ、
いま、あの頃の親父とは、かけ離れた自分がいる。
「家族思いの優しいパパ」
時代なのかもしれない。
でも、それって正しいのか?
ふとそんなことを思ったり。
公式設定からわかることは、
- 新井浩文さん演じる主人公・椎木の父親は家庭に無関心だった
- 父親は職を転々として、裕福とはほど遠かった
- 一緒にキャッチボールをした記憶もない(ムービー内では主人公が子ども時代、ひとりで壁当てで遊んでるシーンが出てきます)
- そんな父親を反面教師にして努力してきた
- そして今自分は父親とは正反対の「家族思いの優しいパパ」になれた
- しかし、それが正しいことなのか、ふと疑問に思った
こういうことみたいです。
父親である主人公は、なぜ今さら「家族思いの優しいパパ」である自分のことを疑問に思ったのでしょうか?
これを検証していきます。
場面検証
そして、かなり長くてマニアックですが、それぞれのシーンを書き起こしてみました。左がムービー再生後の大体の秒数です。大きな場面転換のところは紫の太文字にしています。個人的に気になったけど細かな部分は薄いグレー文字にしています。
0:00 家の前にあるゴミ捨て場のシーン
ゴミ箱にゴミを捨てる主人公
0:03 蓋を閉めず、そのまますぐに立ち去る
0:08 ふだんの通勤シーン
0:14 バスの中のシーン
0:18 音楽が流れ回想シーンが出てくる
0:23 回想シーン: 家庭でのワンシーン
主人公「いってきます」
妻「あ、ちょっと待って!」
妻「帰りにケーキお願い」
カレンダーに印がついており、今日が子どもの誕生日であることがわかる
赤字や青字が見えないことから月曜始まりカレンダーの可能性
その場合、この月は30日までしかないことと、撮影時期および映像公開日を考えて、じゅんくんの誕生日は2016年11月15日の設定?
出勤前、妻から誕生日ケーキを買ってくるようお願いされる
→妻もスーツを着ていることから共働きであることがわかる
主人公「はぁい」
玄関で大きなゴミ袋二つを手に持った主人公
0:31 再びバスの中のシーン
バスの中で妻に言われたことを思い出している
0:36 会社でのシーン
上司から「なんで報告しなかったんだ」と叱責されている部下
そちらを見る主人公
0:42 妻からのLINE (?)で「プレゼントもお願い」という一文とともに、
グローブのスタンプ(絵文字)
0:46 後輩から書類のチェックを頼まれ、無言で書類を受け取る
0:50 家族三人の待受画像が設定されたスマートフォンが映る
→携帯に写っている時刻が 11時26分
0:52 子ども時代の回想シーン
作業着を着た父親が玄関から出て行く場面
「あの頃の親父とはかけ離れた自分がいる」
0:55 会社外のシーン
少し小走りでかけていく主人公の背中が映る
→お昼休みに急いでプレゼントを買いに向かっていることをここで暗示
0:58 再び子ども時代の回想シーン
壁の的を見つめる主人公 左手にはグローブ、右手にはボール
1:00 汗だくなので、ずっとボールを投げていたことがわかる
1:02 再び現在のシーン
スポーツ用品店でグローブを見つめる主人公
右利き用のグローブを触っている
先ほどの汗だくのシーンは、自分が父親から買ってもらったグローブを初めてつけて、時が忘れるほど練習したときの場面(かもしれません)
「家族思いの優しいパパ」
1:06 帰宅シーン
夕暮れであるため、仕事が終わり家に向かって歩いて帰っていることが分かる
「時代なのかもしれない」
1:09 ふと足が止まる
「でも、それって正しいのか」
1:14 飲み屋でのシーン
にぎやかで、仕事終わりの人が集まって来ている時間帯だと想像できる
昼前に叱責されていた部下を連れて飲み屋に来ている
→前のシーンからの場面転換で、家に帰るのをやめて後輩を連れて飲みに行ったことが分かる
主人公「あ、おれも昔怒られてたけどねぇ」
後輩「あ、そうなんすか」
主人公「うん」
1:20 机に置いておいた携帯がふるえる、マナーモード、手に取る主人公
後輩「でなくて大丈夫ですか」
携帯の画面を見ながら
主人公「うーん、うん、大丈夫」
今度は胸ポケットに携帯をしまう主人公
胸ポケットにしまうことで、また震えたらすぐに気づけるよう連絡は気にかけている
1:29 外のシーン
後輩「あ、先輩!今日はごちそうさまでした」
主人公「うん、じゃあまた明日。おつかれ」
両手にケーキとプレゼントを持っている
ここで後輩と別れる
1:39 家のリビングでのワンシーン
怒っている妻と向かい合う主人公
部屋は誕生日のお祝いで飾り付けされている
妻「なんで飲んで帰ってくるかなあ」
1:48 目線を下にさげた主人公のアップ
主人公「風呂入ってくる」
妻「ちょっと待って、話まだおわっ」
1:50 お風呂場のシーン
牛乳石鹸のアップ
風呂場で今度は目線を上げる主人公
→先ほどとの目線の上下対比で、ここで気持ちが切り替わっていることがわかる
1:56 子ども時代の回想シーン
嬉しそうに父親の背中をゴシゴシしている場面
「親父が与えてくれたもの。俺は与えられているのかなぁ」
2:02 再び、現在のお風呂場のシーン
湯船で顔を洗い、一息つく主人公
「ふとそんなことを思ったり」
2:13 再びリビングのシーン
お風呂から上がり、普段着に着替えてリビングに戻って来た主人公
主人公「さっきはごめんね」
イスを引いて座る主人公
妻は笑顔でうなずき、子どもをテーブルに呼び入れる
2:23 朝の街並みを俯瞰したシーン
曇り空
→主人公の心が晴れやかではなく、まだすっきりとしていないことを暗示
2:24 家の前にあるゴミ捨て場のシーン
ゴミ箱にスチール缶を捨てる
→今度はきちんと蓋を閉めることで、前日のゴミを捨てる時との心境の違いを暗示
2:31 バスの中のシーン
外を眺める主人公のアップ
2:34 「さ、洗い流そ。」のキャッチコピー
2:42 牛乳石鹸のロゴおよび文字が映る
そして、ムービーを見る限りでうかがい知れる主人公のキャラクターは、こんな感じでした。
- 会社でも、家庭でも、あまりコミュニケーションが上手ではない、口数が少ない
- 会社では仕事を問題なくこなすことに主眼を置いている
- 後輩とのコミュニケーションが乏しい(書類をたのまれたとき返事しないシーンとか)
- 父親から与えられたものを大切にしている
- 今の自分が、父親として、子どもに与えられるものがあるのか自問している
正直、このムービーだけだと分かりづらいのですが、多分、こんな設定が裏にはあったんじゃないかなと思います。
あの頃の父は、貧しいながらも一生懸命働いて家族を養ってくれた。
そんなさなか、自分の誕生日に、父がグローブをプレゼントしてくれた。
父はいつも仕事にかかりきりで、一緒にキャッチボールをしてくれることはなかった。
それでも、あのときは嬉しくて、買ってもらったグローブをつけてずっと壁当てしていたなぁ...。
いつも、玄関から出ていく父、その背中を見送ることしかできなくて寂しかった。
でも、その背中をゴシゴシ洗って、父に喜んでもらえるのが嬉しかった。
たまに一緒にお風呂に入れた時、父と話せるのが嬉しかった。
はい、妄想のあと。ここからはさらに私見というか想像です。
父親はその背中で、子どもである主人公に父親としての在り方をおしえていたのかもしれない。
今の自分はどうか?
確かに父親を反面教師にして、幸せな家庭を築いた。
でも、父のように仕事を精一杯やっていたか?
早く家に帰ることばかりを考え、会社の人間とは最低限のコミュニケーションで済ませ、問題を起こした後輩のフォローをせず、誘って飲みにいくこともない。
そんな自分のままでいいのか。
そんな仕事への向き合い方でいいのか。
それは子どもに誇れる父親の姿なのだろうか。
このまま帰って、子どもにプレゼントをあげていいのだろうか。
あのときグローブをくれた父親と、あまりにも大きく違う自分が...。
そう、主人公は考えたのかもしれません。
だからこそ、帰宅途中にやはりと思い返し、叱責された後輩を呼び出して話を聞いたのでしょう。
おそらく彼にとって、それは今日でなければダメだったのです。
もちろん、これはすべてが褒められる行動ではありません。
子どもの誕生日は前から決まっていたわけですし、家でお祝いしようというのも前から話し合っていたことでしょう。奥さんからの電話にでなかったことなど問題点はいくつもあります。ここが今回炎上している理由でしょうね。
また、この主人公は口下手で、自分の思っていることをうまく表現できない設定があったと思われます。
だから、会社で後輩に書類チェック頼まれた時も無口ですし、飲み屋でのシーンも全然饒舌(じょうぜつ)に励ましているわけではないですし、帰宅して奥さんに怒られている時もうまく説明できず、すぐに風呂にはいってしまう有様です。
どうしてもその日のうちに後輩を飲みに誘って励ましたい!というのなら、飲みにいく前に電話して事情を話し、何時までには帰るというようにするべきでした。
しかし、こういうとき父親ならどうしていたか...その父親像に自分を重ねたせいで、事前連絡をしなかった、電話にも出なかった可能性もあります。家庭を顧みない父親の真似を、いくらなんでも子供の誕生日にしなくてもよかったんじゃないかな〜とは思います(笑)
ただ、ぼくが一番可能性を考えているのは、口下手な主人公は自分が思っていることすべてを妻に説明するのが難しかったからこそ、電話にも出ず、自分の行動で示すしかなかったのだということです。
まとめ
父親として、今回のムービーの主人公に共感できるかといえば、仕事に対して向き合い直そうとする姿勢は、共感できます。
ふだん、仕事 < 家庭で優先している自分がここにいますので :D
ただ、やり方がまずかったのは否めません。
よりによって子どもの誕生日になぁ〜という思いなので、同じ父親として、主人公の行動をまるっと肯定するつもりはありません。
主人公は「家庭思いの優しいパパ」である自分に対して、本当にこのままでいいのかと疑問を持ったので、仕事にも家庭と同じくらい向き合わなきゃ...ということで今回の行動に出たのだと推測されます。
今回のムービーでは、その不器用な主人公の姿を描くことで、主人公がその心中を他者にうまく表現・説明できないもどかしさも含めて「さ、洗い流そ。」というふうに表現したかったのだと思いますが、短いムービーの中では伝わりにくいですよね。
また次の日が来る。
朝、ゴミを出して会社に向かって。
だから、夜、悶々とした気持ちをお風呂で、牛乳石鹸で洗い流しましょう。
こういうメッセージ性だったのかと。
もしかしたら、このムービーの脚本家さんか監督さんは、映画畑の方もしれません。そういう人たちって、誰でも分かるようなプロットではなく、こう凝った内容を好みますからね。
正直、「作品」として観るとなぜ炎上するのか分からないレベルですが、短いムービーで「CM」として表現するのであれば、誰もがわかるような分かりやすい内容が求められる、それが現代なのだと思いました。ここが電通さんおよび牛乳石鹸さんが押さえておくべきポイントなのかもしれませんね。
新井浩文さんもTwitterで今回のことについてコメントしています。
うちの事は嫌いでも、牛乳石鹸は嫌いにならないでくださいm(__)m
本日もさいごまでご覧いただきありがとうございました。
以上、オオセラがお届けいたしました :D
(おしまい)